春の声
そっと耳を傾けると
春の声がする
さわさわ
ふつふつ
風が吹いて
緑の芽が顔を出し
ぴぃぴぃ
くすくす
少しうつむいて
やわらかに微笑んだ
とくとく
きらきら
ときめきの春へ
さそっている声が聞こえる
愛しいたくさんのもの
小さな、小さな命たち
生きて、生きて、溢れて……
それぞれの刻む時の終点
サヨナラはいつも突然
生きて、生きて、溢れて……
アナタにふれた温もりも
キミをいだいた柔らかさも
タクサンの命のときめきも
溢れて、溢れて、こぼれ落ちる……
私の名前は、コト。
私が生まれた時、母がコトンという音を聞いたからとか、古都のイメージに合ってるとか、言霊のコトとか、いろいろ説はある。
でも、名づけられた名前は、コト。
中学3年生の春、修学旅行のシーズン真っ只中。
ああ~、でも、やる気皆無……。
奈良で鹿見るくらいしか楽しみはない(韻踏んでる?)。
私は行きつけのサテンで大きなため息をついた。
と、福○雅春似の常連のオニーサンが、片端の唇をちょっと上げて、何ともいえない優しい眼で、私を見た。
そりゃ、奇遇だね~俺も、来週、キョートでライブあるんだよ。
金魚の○ンコのM氏もにこやかに言う。
良かったら、コトちゃんもドーゾ。
気が向いたらね~。
大体、自由時間なんて、中ボーの修学旅行にはありえない。
でも、でも……もしかすると、その時から、ワンダーツァーは始まっていたかも……まさかね?
なんと、私は本当に、清水の舞台から飛び降りちゃったのだ……。
あなたを信じています
キミもまた信じてください
見交わす瞳と瞳
一点の濁りも無く 清らかに
春の宵 散る花の下
誓い合い、契る約束
ただひとたび残り香に酔い
唇から零れる言の葉
愛しさの時を刻む
見えない真実もきっと感じられるから
誰もがみんな抱きしめたい
ただひとたびぬくもりに包まれて
一度だけ 一度だけ
約束の言の葉は刹那と永遠を繋ぐから
ただそれだけでいいと想う
何度でも 何度でも
切なさがこんなにも溢れるから
もっと確かめ合えたらいいと想う
あなたを想う
キミを想う
夢の中で、ぽやぽやふらふらして、田舎に帰ろうとしない私に、亡くなった父が言いました。
父は入退院を繰り返していて、余命いくばくも無いことを本人も自覚しています。
「お前は地元の人間と結婚して、戻ってくると思っていた。そうすべきだった……」
何故か、家は古い血筋の神社で、アメノハハキリの剣を祭っています。
兄も戻って欲しいといいます。
でも、私にはもう……。
同じく亡くなった祖母が出てきます。
死んでいる筈の人間が夢の中ではリアルに生きていて、私を責めるのです。
「もっと近くにいてくれたら良かった、もう何処にも行くな」と……。
私が帰るべき場所……。
見失いつつある今に、どうしてこんな夢を見るのか?
リアルすぎて、眠れません……。
「もぉぉっ! どうしてもっとスピード出ないの!?」
マミー王女がぶんぶん怒っています。
「そんなこと言われても~~~~定員オーバーですからぁ~!」
カラフルな球の上に立ち、器用に球を足で転がして操っている水色の猫が答えました。
そうなんです、行きはタマ君、ガァ坊、マミー王女の三人だけでしたから、球は野を超え、山を越え、川を流され、夕陽の沈む地平線を越え、そのず~~っとず~~っと向うにある忍者の隠れ里目指して快調に転がることが出来たのです。
でも、帰りは……。
行きの三人に加えて、王様の身を案じたとっても可愛い紫ちゃん、そのパパで忍者の頭領の五右衛門さん、それに……。
「ねえ、何で秋夢さんまで乗ってるの?」
くるりと振り向いて、ガァ坊が聞きました。
「いや、隠れ里にはマイスポーツカーで来たんだが、あれは燃費が悪くてな……こっちの方が速そうだから、車は『白ヤギさん&黒ヤギさん運送屋』に預けたんだ」
秋夢さんは煙草をくわえままニヒルに笑いました。
「しかし、揺れるな」
「重量もオーバーしてますからね~」
「とりあえず、お腹が空いては戦は出来ないわ。おにぎりをどーぞ、皆さん」
紫ちゃんが唐草模様の風呂敷を開きました。
「おお~あの小さかった紫がおにぎりを握れるようになるとは……パパは嬉しいぞ」
五右衛門さんがむせび泣きながら、おにぎりをパクリ。
「あっ、待っ……」
「……ぐっ!? うがぁぁぁ~!!」
いきなり五右衛門さんがもだえ苦しみ出しました。
「……ごめんね、パパ。そのおにぎり、私じゃなくて婆やが握ってくれたの……婆や、中に一個痺れ薬を仕込んでおいたって……だから、注意してって言おうとしたのに」
「じゃあ、残りは安全だな」
秋夢さん、あっさりと手を伸ばします。
「いただきま~す」
紫ちゃん手作りじゃなくてちょっと残念……と思いながら、ガァ坊もパクリ。
「あら、美味しいじゃない」
横で苦しんでいる五右衛門さんを気にもせずマミー王女はニッコリ。
タマ君は体の中はゼンマイ仕掛けなので、何も食べれません。ちょっと羨ましそうに皆を見ています。
「ハハハ~婆やめ、ワシをたばかるとは、やるようになったな」
復活した五右衛門さん、目は怒りながらも、しびれ薬入りのおにぎりを食べ続けます。優れた忍者はいかなる毒にもすぐに耐性が出来るように訓練されているのでした。
「清流の水を汲んで煮出したお茶もありますよ~」
紫ちゃんが魔法のケトルを取り出して、言いました。
「どれどれ、口直しに一杯もらおうか」
「あ、パパっ!」
「ぐぁぁぁぁ~~グフッ」
ケトルの注ぎ口から直接飲んだ五右衛門さん、いきなり苦しみだしました。
「もおぅ~ケトルの先には、婆やが水泥棒対策でドクニンジンの汁が塗ってあるのに……行儀良く、お茶碗で飲んでちょうだい」
紫ちゃんがプンプンして言いました。
「いいなぁ~ボクも紫ちゃんにしかられてみたい」
ガァ坊が羨ましそうに言いました。
「……あら?」
マミー王女が首を傾げました。
「ねえ、五右衛門パパ、まだ生き返って来ないわよ?」
「変ですね~忍者は修行でドクニンジンにも耐性が出来てるんじゃないですか?」
タマ君が紫ちゃんに尋ねると、紫ちゃんは、真っ青になりました。
「た、大変! パパは他のどんな毒も大丈夫だけど、ドクニンジンアレルギーで、これだけは駄目だったのよ! どうしましょう?」
「おいおい、それじゃあ、俺が暗殺するまでもなかったじゃないか」
秋夢さんは肩をすくめました。
「わぁ~~~大変だぁ! 五右衛門パパの体にボツボツが出てる!」
ここに至って、ガァ坊もやっとアタフタしました。
「全くしょうがないわね~」
マミー王女は、自分の顔を巻いている包帯の端っこを千切ると、五右衛門さんの口に押し込みました。
ゴックン。
飲み込んだ音と同時に、五右衛門さんがガバッと起き上がりました。
「おお~死ぬかと思った……」
五右衛門さんの体からボツボツが綺麗に消えています。
「……てか、死んでたと思う」
ガァ坊が汗を拭きながら言いました。
「さすがですね、マミー王女の包帯は、古来からミイラの粉が万能の薬として重用された以上の効果があるようですね」
タマ君、関心することしきりです。
「あ~ん、パパったらもう~~おっちょこちょいさんなんだからぁ」
「おお~紫や、心配させてしまって……」
忍者親子はヒシと抱き合いました。
ホロリ。
良い話やね~。
ガァ坊たちもつられて感動しています。
「フッ……くだらん」
秋夢さん、煙草を捨てようとして思い直し、ガァ坊から貰ったアヒル灰皿に灰を落としました。
こうして、和やかに、球に乗って旅は続きます。
が、その頃、王様はとんでもないピンチに陥っていようとはまだ誰も知りませんでした。
というか……何の為に急いで戻ろうとしているのかを綺麗さっぱり忘れています、この人たち……(汗)。
果たして、六人は王様のピンチに無事間に合うのでしょうか?
とっても心配ですが、まったり待て、次回!!
待てない人は、白ヤギさん&黒ヤギさん郵便でお手紙を出そう!!(めぇ~~)
ピンポンパンポーン!
城内放送のお知らせが流れます。
『ピッピ大臣に、ナゾー様の子分のタロー&ジローさまからお電話が入っています。大至急、お近くの内線電話に出てください』
「ルナちゃんの声はいつ聴いても綺麗だな~」
王様の息子で、切れ者のコロ君もガールフレンドのルナ嬢のこととなると、つい口元がゆるんで、うっとりと聞きほれてしまいました。なので、肝心の内容は完全にスルーです。
「おっ、お主に電話じゃ。早く出てあげなさい」
執務室で、セッセと書類に判子を押していた王様が顔も上げずに言いました。
「ハッ……はい、でち」
ピッピ大臣は真っ青になってフリーズしていましたが、なんとか返事をしました。
(どうやら、ココのマヌケどもはまだ何も気づいてないようでちね)
王様に背を向けたピッピ大臣の愛嬌いっぱいの顔が、邪悪な表情に変わりました。
ピッピ大臣が出て行くのをチラリと見送りながら、王様は短い首をちょこっと傾げました。
(ほぉ~ピッピ大臣があのナゾーの部下の双子のワンコたちと知り合いだったとは、世の中は狭いのぉ~)
「王様、そこまでわかっていて、何故気づかない!?」とは、誰もツッコミを入れてくれなかったので、人のいい王様はニコリとしました。
(そういえば、大臣は子供に人気があるからのぉ~)
王様はとってもニコニコして、勢いよく判子を押しました。
ポン!
「ち、ちまった! まだ読んでいないのに押しちゃったぞよ~~コロにこの間もちゃんと確認してから押すように注意されたばかりじゃったのに……」
シュンとしながら、王様は書類を眺めました。
眺めていく内に、あることに気づいてハッとしたようです。
「こ、これはっ!?」
その頃、ピッピ大臣はまだ電話でタロー&ジローの話を聴いていました。
「「俺たち、改心したっす!!」」
二匹が声をそろえて叫びました。いきなり言われてもさっぱり事情がわかりません。
「「石の魔女は生きていたっす!!」」
「支離滅裂でちね」
「「煙草ポイ捨て防止っす!!」」
「だから、何の用でちか?」
「「感激したっす!!」」
「……なるほど、つまり秋月は口ほどにもなく五右衛門暗殺に失敗したという訳でちね」
ピッピ大臣は頭をフル回転させて迷推理しました。たまたまそれがドンピシャリに当たりました。
「「俺たち、引退するっす!!」」
タロー&ジローがまだ何か叫んでいましたが、ピッピ大臣はさっさと電話を切ってしまいました。
「しかも、どうやらアチキの正体がバレたようでちね。もっと穏便に事を運ぶつもりでちたが、奴らが戻ってくる前に、大王を始末する必要がありまちね。そして、新大王には……」
ピッピ大臣はそれはそれは邪悪な笑みを満面に浮かべました。
ああ~遂に悪の総元締めが直接動き出すようです。
いまや暢気な王様の命は風前の灯火……。
果たしてガァ坊たちはこのピンチに間に合うのか!!??
次回怒涛の最終回一歩前! 心して待てっててね!
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