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Thursday, July 22, 2004

二度目のサヨナラを(1)

***(2へ)***

「お帰り」
仕事が終わってマンションの前まで帰って来ると、自分の部屋に灯りが点いているのが見えた。
まさかと思いながら、急いで部屋に行き、チャイムを鳴らすと、当たり前のような顔をして、彼が中からドアを開けた。
「どういうこと?」
「久しぶりに会ったのに、ツレ無いな、ん?」
慣れた手つきで、抱き寄せられた。
「止めてよ、リューイチ、私たち……もう……」
「会いたかったよ、ワカ」
唇を塞がれて、思わず目を閉じ、キスに反応してしまっていた。数え切れ無い程交わしたキスの味だった。彼女の体を知り尽くした手が皮膚の温度を上げていくのがわかる。

「灰皿何処いったかな?」
シャワーを浴びて、戻ってくると、ベッドに寝そべったままのリューイチが聞いた。
「ちょっと待って」
ワカはキッチンの棚に仕舞い込んでいた灰皿を探し出して、サイドテーブルに置くと、ベッドの端に腰掛けた。
「いつこっちに?」
「今朝、本社に用事があってさ」
リューイチはこの春の配置換えで、北海道に転勤になった。
ワカとは三年付き合っていたが、次第に遠距離恋愛にお互い疲れてしまった。別れを言い出したのは、リューイチの方だった。もしかしたら、向こうに気になる相手がいたのかも知れない。
「ホテルとかとらなかったの?」
嫌味に聞こえるように言う。
「ん? 一応、会社がとってくれてるよ。けどさ、ワカに会いたかったんだ」
彼の愛用の煙草の匂いが部屋に充満する。煙がまとわりつくように、リューイチの体温に包まれてしまう。
「駄目っ」
弱弱しく抵抗する。
「いいじゃ無いか、コレ、好きだろ?」
タンクトップと胸の隙間に後ろからリューイチの手が滑り込んできた。
「ンンッ……」
リューイチの手は好きだ。大きくて、無骨そうに見えるのに、柔らかく、繊細に触れてくるから。
「なあ……もう一回しないか? 湯上りのワカ、色っぽすぎるよ」
「もうっ、私、夕食まだなんだから」
「俺もさ。もう一回だけな……その後、一緒に風呂に入って、ドレスアップして豪華なレストランに行こう。いくらでも奢るからさ」

ああ、いつものパターンだな、と思う。

いきなりやって来て、合鍵を使って部屋で待っている。そして、彼の約束する豪華なレストランには一度も行った事が無い。
二度目が終わっても、お風呂場でもう一度抱かれるだろう。そして、お互い、疲れ果てて眠りに落ちる。もし、夜中にお腹が減って目が覚めても、近くのコンビニで済ませてしまう。

付き合っていた頃のような愛情がどのくらい残っているのかはわからない。でも、体に馴染んだ彼の愛撫は好きだと思う。
それは、初めて別れた男に抱かれた夜の闇の中でのことだった。

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